<作品(選曲)について>

(1)選曲のもつ重要性

    選曲は

「自分たちの団体(以下団体としるす)の総合力をいかに把握できているか」
「団体の短所、長所、編成や楽器手配上の問題点を把握できているか」
「練習計画でどの時期にどういう練習が必要かを把握できているか、またそれが可能か」
「練習を通じてどこまで短所が消え、長所が伸びるか」
「中長期的(1ー2年)な展望にたった団体(もしくは指導者)の目指す方向にあっているか」

など極めて団体の基本にかかわる重要な要素に直接つながっている。

しっかりした選曲ができることがよい指導者の大切な条件である。

(2)選曲のポイント(技術面)

(a)アマチュアにおける難しさ

・難しさにはいろいろなものがあり、ひとつではない。次のようなものがアマチュアにおける難しさであろう。

レヴェル1 (ア) 極限的な音域が使用されていること
(イ) きれいな強音を出すこと
レヴェル2 (ウ) 極限的なタンギングが要求されている
       (エ) きれいな弱音を出すこと、弱音でうたうこと
レヴェル3 (オ) 極限的な指使いが要求されている
    (カ) スタミナがもたない
       (キ) (オーケストレーションそのものに原因があって)バランスがとりにくい
レヴェル4 (ク) 正確にはやりにくいリズム(付点など)が使われている
     (ケ) 違うパートどうしのリズムが合いにくい
(コ) 曲のスタイル(内容)がつかみにくい
   (サ) 特殊な奏法が使われている
   (シ) 譜読みが難しい
   (ス) 変拍子が使われている


上記の難しさは、私の考えるアマチュアが練習で克服できにくい順にあげたつもりである。(程度の問題もあるが)短期間で「高音を出したり」「きれいな強音」を出すのはきわめて難しい。「タンギング」や「きれいな弱音」はかなり大変だがあるところまではなんとかなり、「指使い(程度の問題だが)」はたいてい練習量で克服できる。「スタミナ」「バランス」「リズム」は意識の問題で、「曲のスタイル(程度の問題だが)」「奏法」などはトレ-ナーの問題で、「譜読み」や「変拍子」は全員が一度個人的にその部分を考える機会を作れば、そのこと自体は大きな問題ではない。  



(b)オーケストレーションに起因するバランスの問題


(キ)のバランス(主としてオーケストレーションに起因する)はアマチュアにおいてはやや難しい面がある。実際に楽譜の通りのダイナミクスで演奏してもよいバランスが得られない曲は現実にある。

プロまたはきわめて意識の高いアマチュアの奏者は、この問題を自分たち自身で判断し行動できるが、大半のアマチュアの場合はその判断はできない。そこで指揮者が「バランスが悪いということ」が

「メンバーがそろっていないから」か

「演奏技術が十分でないから」か

「曲そのもののもつオーケストレーションが原因」か

を決断することはアマチュア相手には難しく、そのことが判断や指示を遅らせ、結果としてアマチュアの場合の難点である「指示を全員に徹底させる」ことを不十分にさせていることがよくある。

(c)演奏の難易度と目的の違い

実力を10としたときに「10+α」「10」「10-α」の力が必要な曲をやる目的は少しずつ違う。いろいろなレヴェルの曲を目的に応じて組み合わせていくことが大切

(d)団体の問題点の把握

長所よりも短所のほうが選曲では問題である。とくに短期の練習ではどうにもならないものが多い曲は避けたほうがよい。「編成上の足りない楽器はないか、それはなんとかできるか」「弱体なパートに目立つ部分はないか、それはなんとか克服できるか」「難しさが練習で克服できるか」

楽に吹けない音域がそのときのメンバーの弱体なパートに使われているとき、そういう曲は慎重に選ぶべきである。(特にトランペット、ピッコロ、チューバはその傾向が顕著にでやすい)

(3)練習の組みたて

   練習の組みたて

・選曲は練習の開始であって、選曲の目的に従って短期的(0.5-1ヶ月)な練習計画、中期的(2-3ヶ月)の練習計画をたてて、練習をすすめる。練習の完成度にしたがって内容を修正していく。

・問題箇所は集中的に克服するほうが効果があがる。1時間の曲をすべて同じウェイトで練習しては、問題箇所が目立つようになるだけである。問題箇所をチェックして十分な時間をかけること。

・アマチュアの大きな問題点として「演奏会が終わるごとに1からやり直し」つまり「練習によって技術が向上してこない」という点がある。「音色」「テクニック」「読譜力」「合奏のノウハウ」などを1回かぎりのものとせず、他の曲につなげていくような内容を考えていくべきである。


(4)総合的な選曲

   技術面以外の選曲の要素

(a)演奏会全体の組み立て

・演奏会の全体をバランスよく組み立てること

・パセリやしょうがの役割をはたす曲はなかなか選曲の話題になりにくい

・「客の立場」での発想

(b)団体のもつ現状把握

・現状の編成にあっているか?

・演奏会向けに編成を+αするかどうか?

       その時の費用や手配などは?

・練習時間はどれくらいとれて、どこまで問題箇所がクリアーできるか?

・団員の意欲の程度は?

・今回の選曲を積極的に取り組むのかどうかの「団員、団体の総合力」

(c)将来的な展望や指向

・選曲の指向が団員の納得できるものか?

      団員の好みにあっているか?

・選曲が編成&技術で団体の将来の方向を向いているか?

・団体の長所や指揮者の特性とまったくあわないもの(100%あう必要はないが)ばかりではないか?




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